たとえ、涙が頬を濡らしても。


とはいえ、夏休みなわけで冬汰が堤防に居るなんて分からない。


連絡先も知らなければ…

住んでいるところも分からない。


せめてLINEぐらい聞けていたら…


無我夢中で走って、顔を上げると

堤防には冬汰の姿はなくて……



「だよね…。いる訳ないか。」



言葉がポツリと出てしまった。


堤防に腰を下ろし、仰向けになって深呼吸して息を整えたあと、空を見上げた。


青い、青い、夏の空。


スっと空に手を伸ばす…



「はぁ…ダメだ。」



わかんない。冬汰がわかんない。


冬汰を思うと、どうしようもない気持ちでいっぱいで…気づけば涙が溢れていた。


涙で青空が潤んで見えて。



「ひくっ…ひくっ…」


『何、泣いてんの?』



頭上から聞こえた声。



「とう…たぁぁぁぁ」


『俺に会いたくて泣いてたわけ?』


「わ、笑うな!!」



なんで、このタイミングで……




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