たとえ、涙が頬を濡らしても。
ー冬汰 sideー
赤い綺麗な夕焼け空が広がる堤防…
俺の上に覆いかぶさって満足気に笑う澪春の目は、さっきまで泣いていたせいか目が少し腫れて見える。
俺が泣かせたのと同じか…
あいつ、澪春には黙ってるのか。
その方が、澪春にとってもいいだろう。
俺が死ぬとも知らずに、満足気に笑ったと思えばまた静かにぎゅっと抱きしめてきた。
お前を早く突き放せば、澪春は泣かずに済むのかな。
お前を早く嫌いになった方が…
「ごめんね、付き合ってもいないのに…」
『…』
「勝手に泣いてごめん」
『澪春が謝ることねーよ。
悪いのは全部…俺だから。』
澪春は俺をぎゅっと抱きしめてくれているけど、俺は抱きしめられない。
今、抱きしめたらもう…突き放せない。