たとえ、涙が頬を濡らしても。



俺のことなんてほっとけばいいのに、どんどんどんどん会う度に惹かれて…


でも、甘えてしまうから連絡先は敢えて聞かない。


それでいいんだ。



「俊稀に何言ったかは…聞かないでおく。」


『ありがと』



そう。


澪春は俺の胸の内には、踏み込んでこない。


そう言った質問もしてこないし…

気を使わせているのかわかんねーけど。


だから、初めはリラックス程度に…

会えたらラッキー程度に堤防に来ていた。


楓といると、いつも悲しそうな顔するから。

そんな顔、いつもされたら辛い。


俺の病気のことを知らない澪春は、ただただいつも笑って、落ち込んで、また鉛筆を握って隣で絵を描くんだ。

コンテストに向けて一生懸命に…


だから今は澪春に会うために堤防に足を運ぶようになった。


“好きだ”なんて死んでも言えない。


でも…死んでからなら…いいかな。




ー冬汰 side endー





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