たとえ、涙が頬を濡らしても。
⇒冬汰&楓side
ー楓 sideー
夏休みが始まって1週間後、冬汰は体調を崩して高熱が続いている…
両親は共働きで、弟の夏翔は不真面目でいつもどこ行ってるかわかんないし…
だから、冬汰の体調が良くない時には私が代わりに面倒を見ている。
小さい頃から、私の隣にはずっと冬汰がいた。
私がこの地元の高校に進学した理由も、冬汰の身にもし、いつ、何が起こっても対応できるように大きな病院と家が近くだったからに過ぎない。
冬汰が高校を辞めて随分経つ…
寿命を告げられて、本当は入院が安静なのに、冬汰はそれを選ばなかった。
『どうせ死ぬなら、残りの時間の使い方ぐらい自由にさせて。』
そう、お母さんに言ったのだ。
冬汰には生きていてほしい。そう願っても叶わないことなのかもしれない。
一番、近くにいたい。
ずっと、ずっと…隣で見てきたから。