たとえ、涙が頬を濡らしても。
ベッドの上で寝ている冬汰の頬にそっと触れる…
熱のせいで、身体中が熱い…
朝から何も食べてないし、口にするのはアクエリだけ。
せっかく作ったお粥は、テーブルの上ですっかり冷めてる…
「ねぇ…代わってよ…
その熱、私が貰うから…」
寿命なんて、ただの予想。
本当はいつ急変してもおかしくない。
毎日、毎日、冬汰は死と隣り合わせなんだ。
でも、ここ最近の冬汰はちょっとだけ…
笑うようになったんだ。
小さな頃はよく笑っていたけど、大きくなるにつれて笑顔は減り、寿命を告げられてから人を避けてしまっていた。
『バカ…』
「冬汰?」
『お前が泣くから、目が覚めただろ…』
「ごめん…ひくっ…ひくっ…」
冬汰の胸元で泣く私を、冬汰は辛そうに息をしながら私の頭を撫でてくれた。
『泣くなよな…』
「…ひくっ」
『楓も部活…あんだろ?
練習サボってると、1週間後の試合…レギュラー入れなくなるぞ?』
私が泣いてる今も、仲間は汗を流しながらボールを追いかけて練習している。
冬汰が体調を崩すたび、私は学校を休み、土日なら部活を休んだ。
突然、冬汰には怒られる。
「うん」
『お前がバスケが好きなの、俺が1番知ってるから。』
頭に乗っていた手が私の頬に触れて、優しく涙を拭ってくれた。
ずるいよ…
冬汰は自分のことよりも、相手のことを考える。
ねぇ…
“みはる”って…誰なの?