たとえ、涙が頬を濡らしても。
少し前に体調を崩し、熱を出した時があった。
その時の冬汰はずっと誰かから貰ったクッキーを眺めていた。
前日は雨で、おばさん曰く傘を差さずにずぶ濡れで帰ってきて、玄関で倒れ込んだって。
案の定、次の日冬汰は熱を出したんだ。
何度も何度も外を見て、ようやく眠ってしばらく経った時だ。
『みは…る』って、寝言を言ったんだ。
寝ている時ですら、ラッピング袋に入ったクッキーを握っていた。
彼女…?って一瞬思ったけど、冬汰は彼女なんて興味ない。って前に言ってた。
私が冬汰の一番近くにいる。って、ずっと思っていたけど…それは私の勘違いだった。
「泣いてごめん。」
『…』
「服、着替える?
汗かいたでしょ?それに、私が泣いちゃったから…」
クローゼットを開けて、シンプルな白いTシャツを取り出した。