たとえ、涙が頬を濡らしても。



人生の残りの時間がわかればいいのにな。

それなら1分1秒足りとも、無駄にしない。


会いたい。

声が聞きたい。


わがままを言うなら抱きしめたい。

唇を奪いたい。


でも、そうしたら後には戻れなくなる。

自分の気持ちや欲、それに蓋をしなければいけない。


“病気”というこの二文字で当たり前が当たり前ではなくなって。

“寿命”というこの二文字で絶望を知った。


なんで俺が…?

って、何度も何度も思ったけど。


生きる意味も見い出せずにいたから、その変わらない事実を受け止めて、適当に過ごして死を待ってきた。


でも…今は違うんだよ。





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