たとえ、涙が頬を濡らしても。
「はい、完成!!」
鏡に映る自分の姿はいつもとは全然違って…
ほんのり、メイクをしているのもあるせいかちょっぴり大人っぽい。
大きな鏡の前で、自分の浴衣姿とアレンジされた髪の毛を見て、思わず微笑んでしまう。
《ガチャッ》
『みっはるー!…って』
「ちょっ、インターホンぐらい鳴らしてよね!」
いきなりドアが開いて顔を覗かせた俊稀は、あたしを見るなり目をパチパチさせた。
『…え!?
み、澪春…ゆ、ゆ、浴衣!?それに髪…』
「あら、しゅーくん早くもお迎えか!」
『お邪魔してます!』
「どーう!今日のこの子!!」
お母さんはあたしの肩をがっしり掴んで笑顔を振りまく。
『お母様、澪春にハートを射抜かれました…』
「よっ!よく言いました!!」
「って!!!!
勝手に話し進めないでよね!!」
頬を膨らませて怒ると、お母さんはやれやれと言わんばかりにかごバッグをあたしに渡してくれた。
「しゅーくん、澪春を頼んだわよ!」
『はい、お母様!!』
「ちょ、俊稀まで…ったくもう!
行ってきます!」
ようやく玄関から出て大きなため息をつく。