たとえ、涙が頬を濡らしても。


ぐいぐい俊稀をひっぱり、食べ歩くこと1時間が経ち、ひと休みするためにベンチに座っている。



「さて、次は…」


『お前、食べすぎ。
金が飛びまくりなんですけど?』


「いいじゃんいいじゃん!」



食べることしか頭になく、打ち上げ花火の事など忘れていた頃に、夜の空に大きな花が咲いた…


そして遅れて大きな音が聴こえてくる…


隣で疲れている俊稀は、ベンチに腰を丸めて俯いていたがその大きな音で顔を上げた。



『花火…』


「上がる時間、忘れてた」



2人して打ち上げ花火を見上げる…───


夜空に咲く花…


地元の小さなお祭りだから、一度に上がる花火は少なくて…


子供ながら、ニコちゃんマークやリボンや星…そんな遊び心がある花火もある。


家から眺めていると小さな花火だけど今日は違う。




「大きくて、すごく綺麗…」



綺麗な花火は大きく咲いて、すぐに散ってしまう…


そんな儚さが、少し切なくて。



『澪春…』


「ん?」



名前を呼ばれて振り返ると…




俊稀はあたしにキスをした…─────





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