たとえ、涙が頬を濡らしても。
なんで…ねぇ、俊稀
ひたすら人気がいない場所まで走り、立ち止まろうとした時に下駄の紐が切れてしまって、コケてしまった…
「痛っ…ひくっ…」
『なに、盛大にコケてんの?』
はっと、顔を上げて後ろを見るとそこには冬汰が立っていた。
なん…で?
『さっき、みんな花火見てるのに1人だけ走っていくお前をみつけた』
「ひくっ…」
『てか鼻緒、切れてんじゃん…』
あたしの前まで来ると、冬汰はしゃがみこんで優しく頭を撫でてくれた。
『失恋でもした?』
「…違…ひくっ」
『身体…震えてる。』
「…」
冬汰は震えるあたしの右手を握った。
ダメだ。
言葉にならない。
冬汰の声に…温もりに…涙が溢れて。
恐怖の涙から、安堵の涙に…