たとえ、涙が頬を濡らしても。



涙で冬汰の顔がよく見えないや…


せっかくお化粧なんてして、髪も巻いてもらったのに…台無しじゃん。


浴衣もせっかく…選んで買ったのに。


そんなひどい顔を見られたくなくて、左手で冬汰の服を引っ張って泣き付いた。



『久しぶりに会ったら、また泣いてるし…』


「ごめん。」


『お前は…笑ってろよ。』


「?」


『…せ、せっかく花火上がってんだからさ。早く涙拭いて見ろよ…』



…これって


冬汰なりの優しさ?



「…ははっ」


『…っんだよ』



涙を拭って、顔を上げるともう花火はフィナーレで。





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