たとえ、涙が頬を濡らしても。



「やっぱり…帰っ」



そう口にした瞬間、大きな花火が夜空に広がった。


…気まずい。



周りがさっきより、より一層一気に賑やかになり、落ち着かない…


冬汰に関しては、花火から目を背けてる。


もちろん…私にも。


ひたすら頭の中でモヤモヤしていると、人混みの中から走ってくる、浴衣を着た女の人が見えた。


花火が上がっているのに…どうしてだろう。


その人は私の目の前を走り抜いて行った…



『澪春…?』


「えっ…」


『楓、ごめん』



そう言い残して、冬汰は走っていった女の人を追いかけて行ってしまった。


…まだ、着て10分ぐらいなのに。


私のバカな行動のせいで、全て台無しだ。



「ひくっ…ひくっ…」



ただ、冬汰が好きで好きでたまらない。


だけど私の一方通行な想いは、届かない。


夜空に咲く大きな花火は、涙で見えなくて…


もう、立っていられずに座り込んで…

大きな声で泣き叫んだ…


けれど、そんな声に耳を向ける人などいない。


ダメだ。

いっそ…消えてしまいたい。



ごめんね。


ごめんね。


冬汰…





ー楓 side end─




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