たとえ、涙が頬を濡らしても。
ー冬汰 sideー
隣で絵を描いている澪春の邪魔をしないように指でギターを弾いていると、気が付けば澪春は寝ていた。
名前を呼んでも反応しなかったし…
ギターを横にそっと置くと、澪春がもたれかかってきた。
夕方だもんな…疲れているのも仕方ないか。
ふと澪春の絵が目に入り、ゆっくりスケッチブックを取って絵をパラパラめくってみる。
そこには模写描き空想画などが描かれていて、空想画と思えるものは澪春独自の不思議な世界観だった。
そして次のページをめくると、あいつの似顔絵があった。
これ…完成してるのに渡してないのか?
ということはもしかして、夏祭り一緒に来ていたのってあいつか…
「冬汰…」
『あ、ごめ…って、寝言かよ…』
幸せそうな顔して…
ほんと、いくら嫌いになる理由を探しても、嫌いになんてなれない。
好きが高まるばっかりで、もうこの思い止められねぇんだけど?
…だからさ、隣で笑ってろよ。
泣いたら、俺が慰めてやるから。
なぁ…神様。
もしいるなら、澪春の傍にずっと居させてくれよ…
頼むから…。