セカンド・ラブをあなたと
「コーヒーでも飲みましょ」
彼女は返事もきかず歩き出して、結局、近くの喫茶店に入った。
彼女はアイスコーヒーを、私は紅茶を注文した。

こちらから話す気はないので、彼女が話を始めるのを待つ。
元カノが今カノに会いに来てるわりに、殺気立ったオーラはやっぱりない。
やたら落ち着いた様子。居心地悪いのは私だけ?

彼女は、置かれたアイスコーヒーに手早くシロップを入れ、ストローで回して、一気に半分ほど飲み干した。
ほんとに喉が渇いてたんだ。妙な感想を覚えながら様子を窺っていた。

「高橋さん、西高だったでしょ?あなたは知らないでしょうけど、あたしはあなたをみたことがあるわ」
この人も西高生なのかしら?でも、私が知らないとわかっているなら、返事のしようがない。
「はぁ」と頷いた。

「10年も経ってから再会してるとは思わなかった」
高校時代の翔さんとはたいして接点はないんだけど、この人に答える必要がない気がして黙っておく。

「子どもがいるんですってね」
それも知ってるの!?私の驚きは読まれたようで、余裕めいた笑みをみせてくる。
「きいてますから。小学生なんでしょ。ずるいわよね」
さすがに聞き流せない。
「ずるいって…どうしてですか?」
翔さんは最初から知っている。だまし討ちめいたことはしていない。

「ショウのこと、信頼してないの?」
私の質問には答えずにきかれた。私も答えず質問を返した。子どもっぽい…。
「私のことは、翔さんからきいたんですか?」
「マナからきいたの。友だちだから」
今度は返事があった。妹さんの友だちなのか…。じゃあ翔さんが今日出張なのも知ってるかも、とさっきの疑問に答を出す。出張先が実家に近いから、今日は実家に帰ると言っていた。

千絵さんが翔さんを知ってるように、翔さんの家族が私を知っていてくれてるのかしら?
私の気持ちは違うところに引っかかる。

「会いに来た理由を聞いてもいいですか?」
翔さんへの信頼を確認しにだけ来たの?
「ショウのガールフレンドがどんな人なのか、気になったから来たの」
まっすぐに目を見て言われて、やっぱり居心地が悪い。
「ショウはあたしの大事な人よ。ぞんざいに扱わないで」
こんな外人みたいな人から、”ぞんざい”って…また変なとこに引っかかってしまった。
でも、翔さん、思われてるね。
彼女の思いの強さは、私の弱いところをついてくる。

彼女は伝票を取って席を立った。
私は動けなかった。
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