君を愛していいのは俺だけ
『陽太先生、好きな人いないの?』
休憩時間になったとき、それとなく話を切り出した。
その答えを聞いて、どう反応するかなんて考えてなかったけれど、自分にどれくらいチャンスがあるのか知りたかったから。
ミルクティーが入ったマグカップを両手で持って、息を吹きかけながら彼を見つめる。
母が淹れてくれた紅茶を飲んでいる彼は、デニムを穿いた長い脚を組み直した。
『いるよ』
『そっか、そうだよね』
自分から聞いておいて、返事に困ってしまったのを覚えてる。
どっちの答えを聞いても後悔するって分かってたのに、聞かずにいられなかっただけで。
『仁香ちゃんは? 学校に格好いい男子、いるでしょ?』
『……い、いません! いたとしても、私なんて相手にされないし』
『そう? 仁香ちゃんはどんな男がタイプなの?』
目の前にいる先生がタイプだって、言いたくなるのをぐっとこらえて、『分からない』と返した。