君を愛していいのは俺だけ
長い脚を組んで、指示をくれる彼の話に聞き入る。
それに、見つめられるとドキドキしているのが隠せなくなりそうだから、意識的にタブレットに視線を逸らした。
「かしこまりました。業界の予測値も合わせて出してみます」
「ん、頼むね」
彼は用が済んでも、組んだ脚を解くことなく座っている。
ドキドキしてるって気づかれてないといいけど、彼と平常心で話す心構えがなかったせいで、鼓動が急く。
「MDに慣れてきてるようだね」
「……はい」
「同期とも仲よくやれてるようだし」
「はい、おかげさまで楽しく仕事ができています」
彼がそんなことを言うなんて初めてだ。
それに、向かいに座っている滝澤さんを見遣って微笑んだ彼は、どことなく挑むような瞳をしていた。