君を愛していいのは俺だけ

 それから、秘密の交際が始まった。

 秘密にする理由は、ただひとつ。
 私の親に知られたら、間違いなく契約を切られるだろうと先生が予想していたから。

 母はともかくとして、父は絶対に許さないと私も思っていたから、先生の提案に反対はなかった。


 週に一度、私の部屋でデートをした。
 春休みや夏休みで予定が合えば、先生の車で少し遠くまでドライブしたこともある。


 そして、私の両親が旅行でいない日を狙って、彼が泊まりに来る時もあった。

 家庭教師の日は、ちゃんと先生をしてくれて。
 そうじゃない日は、彼氏でいてくれた。

 授業中に間違って『陽太くん』と呼ぶと、先生って呼ばなかった罰として、キスをお預けされたり。

 ちゃんと彼女として私と接してくれる時は、『仁香』って呼び捨てられたりもした。


 そして――彼は、私の初めてを知っている人になった。


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