君を愛していいのは俺だけ
『嫌い』と言ってくれたら、よかったのに。
『もう別れよう』って言われたら、頷いたのに。
私に残されたのは――最後に抱かれた時のあの言葉。
『仁香を愛していいのは俺だけ』
あれから約七年経って、紀 陽太によく似た周防さんを前に、私は友人の柚を装っているのだ。
もし……周防さんが、私が大好きな陽太くんなら、聞きたいことがいっぱいある。
本当に、私を好きでいてくれたの?
どうして父のせいだって、話してくれなかったの?
連絡を絶ったのは、なぜ?
私の頭と心は、当時の記憶や想いで満たされていった。