君を愛していいのは俺だけ

「お疲れ様です」
「お疲れ」

　小声で挨拶をすると、似たトーンで返してくれた。

　反対隣に乗っている滝澤さんと陽太くんに挟まれていて、身動きが上手く取れない。
　それなのに、滝澤さんは私の気持ちを知っているからか、意味深な表情で見下ろしてくる。
　だけど、混み合っているエレベーターの中は話しかけられる雰囲気でもなく、降りてから聞き出そうと思った。


　地上階に到着したら、数秒間の窮屈から解放されて大きく息をついた。


　滝澤さんがいなかったら、陽太くんにもうちょっとくっついていたかったな……。

　陽太くんもランチに出るのか話したかったのに、エレベーターを降りてすぐにビルを出て行ってしまって叶わなかった。


「俺が一緒でごめん」
「えっ、なに言ってるの？　そんなこと気にしないで」

　私がいつまでも陽太くんの背を見送っていたからか、滝澤さんが申し訳なさそうに言った。