君を愛していいのは俺だけ
そろそろかなと携帯を手にすると、ちょうど陽太くんからの着信が表示された。
「もしもし」
《マンションの下に着いたよ。急がなくていいから支度ができたら下りてきて》
「うん、わかった。今行くね」
姿見で今一度全身をチェックする。鏡に寄って間近でメイクも確認してから、彼が気に入っていた口紅を塗り、部屋を出た。
気持ち良く晴れた冬空の下、目の前に停まっている白いセダンの横に出て、彼が待っていた。
「忘れ物はない?」
「……うん、大丈夫」
今日の陽太くんは、発色のいい紺のダッフルコートにテラコッタ色のニット姿だ。見るたびにお洒落だなぁと思っていたけれど、プライベートの彼も抜かりないようだ。
助手席のドアを開けてエスコートしてくれた彼が、運転席に乗り込んで車を発進させた。
ハンドルを握り、正面を向いて運転している彼の横顔は、なんだか嬉しそうに見える。