君を愛していいのは俺だけ

 茹で蛸のような顔色で自席に戻ると、向かいにいる滝澤さんが見透かしたように私を見て、口元に小さく笑みを浮かべた。

 だから、こんなことはしないでほしかったのに……。
 クリスマスの後だって、うなじや耳の後ろにキスマークを残されてしまって、隠すのに必死だった。


【ちゃんと俺のことだけ見てて】

 彼から解放されて十分後。
 突然こんなメッセージを携帯に送ってきた陽太くんの、意地悪な表情が目に浮かぶ。

 なにも返す言葉が浮かばず、既読だけ残して仕事に戻った。

 彼が、私をからかっているわけじゃないのは分かる。
 だけど、あれから他の人になびかなかったと知ってからというもの、さらに彼の色気にあてられて、他のことを意識する隙すら奪われてしまったようだ。


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