君を愛していいのは俺だけ
渋谷駅までは一緒だったけど、乗り換えた電車では別の車両に乗った。
あくまでも社長と社員の関係を崩さずに過ごす一日が始まった。
【今夜も帰ったら覚悟しておいて】
一時間ほど前に、朝から抱かれたばかりなのに、早速今夜の予告がメッセージで送られてきて思わず携帯画面を隠した。
今の陽太くんは、七年前の彼とは違う。
こんなに愛してくれる人だったなんて知らなかったし、男性としての本能にスイッチが入った彼の妖艶さは息を飲むほど綺麗で……。
「秋吉さん、行くよ」
「っ、はい!」
打ち合わせの時間になっても、ぼんやりとしてしまっていたら、佐久間さんが声をかけてくれた。
「ぼーっとしちゃってどうしたの? 熱でもある?」
「すみません、ちょっと考え事を」
「まぁ、そうだよなぁ。いろいろ考えるよね、社長室にいると」
話を合わせて返事をするけれど、陽太くんの夜の顔が脳裏にこびりついてたなんて言えるはずがなく、ミーティングルームに入ってきた“社長の顔”をした彼と目が合って、ちょっと気まずくなった。