君を愛していいのは俺だけ

「あまり飲みすぎるなよ」
「……はい」

 海の幸のサラダに箸を付けていると、隣に座っていた彼が声をひそめて言った。
 それまでは、他の社員も交えて盛り上がっていただけに、突然の特別感に胸が鳴る。


「今日はやっぱり遅くなりそうだから、先に寝てて」
「うん」

 和紙に手書きされたメニューを広げ、選んでいるフリをして話す彼は、私に微笑みを向けてきて。


「かわいがってやれなくてごめんな」
「っ……」

 今朝の予告を思い出させるひと言で、シューッと湯気が出そうなほど頬が熱くなってしまった。



 十九時前から二時間半ほどの酒宴はお開きになり、お店の前で各々話している。
 陽太くんや佐久間さんと一緒に二次会に行くメンバーは既に決まっているらしく、男性だけで別行動を取るようだ。


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