君を愛していいのは俺だけ
「それじゃ、みんな気を付けて帰って。飲みに出る人もほどほどに」
陽太くんが区切りをつけると、各々街に散っていく。
私も先輩に誘われたけれど、お酒は強い方じゃないし、MDでの一件以来、彼とのプライベート以外での深酒は避けている。
「秋吉さんは帰るの?」
数名の男性社員は先に歩き出している中、佐久間さんと立ち話している彼を見つめていたら声をかけてくれた。
「はい」
「じゃあ、気を付けてね」
「……陽太くんも」
なにげなく返事をしたつもりが、ふとした気の緩みに自分でもハッとする。
それは彼も同じだったようで、にこやかだった表情が凍りついてしまっていて。
「仲がいいんですね、社長と秋吉さん」
「あのな、佐久間。これは」
「社長、大丈夫ですよ。俺が社内で一番口も堅いし、社長が信頼を置いてくださっているのは自覚していますので、それを裏切るようなことはしません」
先に行きますと言い残して、佐久間さんは男性社員たちの背を追った。