君を愛していいのは俺だけ

「ついでって言うわけじゃないんだけど、実は……」

 柚が携帯を操作して、私に画面を向けた。
 表示されているのは、彼女がかねてから付き合っている彼氏と柚。

 そして、柚は左手の甲をこちらに向けていて。


「……結婚するの?」
「うん! この前プロポーズされたんだ」
「わぁ、おめでとう!」


 就職して、OJTで会った上司にひと目惚れした彼女は、結婚を夢見ていた。
 この人と結婚できないなら、一生独身でもいいと思えるくらいの、本気の恋だったらしい。
 片想いが交際に至るまでも聞いていた私も、心から嬉しいと思った。


「それでね、仁香にひとつお願いがあるの」
「結婚式のスピーチは勘弁して。人前で話すの苦手なの知ってるでしょ?」
「分かってる。そうじゃないよ」

 じゃあ、なに?と、私は首を傾げて聞き返した。


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