君を愛していいのは俺だけ
2:夢か現か
《side 仁香》
――夜の色を帯びてきた熱海の街並みを、温泉宿の部屋から眺める。
年末年始は、例年なら実家で家族と過ごしていたけれど、今年は陽太くんと温泉旅行に来た。
プロポーズを受け入れてから、数か月。
二度目の真夏は、再会した一年前が笑い話になっていて。
距離の取り方に悩んでいた秋も、今年は今までにないくらい近くに彼を感じられた。
そして、クリスマスはロマンティックな時間を用意してくれていて、今回の旅行を聞かされた時は、嬉しくて楽しみで仕方なかった。
《――周防様、貸切露天のお時間でございます》
「ありがとうございます。今から行きます」
仲居さんから丁寧に電話連絡が入って、支度していた入浴セットを手に、部屋を出た。