君を愛していいのは俺だけ
「なに照れてるの? あと数か月もすれば俺の奥さんになってくれるんでしょ?」
思わず少し俯いて立ち止まった私の顔を、いたずらに覗き込んできた陽太くんは、にこにこと笑っている。
「ほら、行くよ」
繋いでいた手を握り直した彼に引かれ、行燈に照らされる通路を行く。
幻想的な雰囲気は、まるでバージンロード。
一歩先を行く彼の背を見つめながら歩幅を合わせて歩いていると、幸せな未来へ向かっているみたい。
宿の最上階にある屋上露天は、夜の街明かりがどこまでも広がっていてロマンティックだ。
「本当、最高だなぁ」
先にお湯に浸かった彼は、都内よりも多い星の数に目を凝らしている。
三人分ほど間を空けた私は、そんな彼の横顔を見つめていた。