君を愛していいのは俺だけ

「っ……陽太くん、近い」
「いいじゃん。他に誰もいないんだし」

 背中から私を抱きしめるのが好きな彼は、耳元で呟く。

 抱きしめられると、今でも鼓動が大きく鳴る。
 慣れることなんてきっとないんだろうな……。



 初めて会ったあの時も、思いがけない出来事で再会した時も。

 働いている彼の姿を見た時も、私を抱きしめてくれる時も。


 言葉にはできない想いがいつも胸の奥にある。


「陽太くん」
「ん? どうした?」

 今年最初の月明かりの下なら、正直に言葉に乗せられる気がして。


「あのね、いつも想ってたことなんだけど……っ!?」

 少し振り向いて、彼に告げようと思っていた声がキスで封じられた。


< 421 / 431 >

この作品をシェア

pagetop