君を愛していいのは俺だけ
「懐かしいな……こうして話すの」
「そ、そうですね」
前触れなく彼が話題を変えたから、さらに鼓動が鳴りだす。
やり場のない緊張のせいで、何度か缶を傾け、夜景に視線を流した。
一緒にこの景色を見られたらいいなって思ってたけれど、叶っちゃったな……。
彼はきっとそんなつもりはないのかもしれないけど、それでもこうしてふたりで話せるだけで嬉しい。
「まさか、見合いで再会するとは思わなかったけどな」
「私もびっくりしました」
「あの日の着物、すごく似合ってた。写真を撮っておけばよかった」
口角を上げて微笑んでくれる彼は、私がずっと焦がれていた陽太くんだ。
七年ぶりに再会した私は、彼の瞳にどう映っているんだろう。
ずっと聞きたかった別れ話に触れていいのか迷う。
せっかく穏やかに話せる雰囲気を壊したくないし、この時間も終わってほしくない。