イジワル騎士団長の傲慢な求愛
6 この想いは秘めたままで
長い廊下の一番奥にある客室に、セシルは連れ込まれた。
口には布ぐつわを、手足にはロープを巻かれ、ベッドの上へ乱雑に放り投げられる。

「殺りますか?」

「いや。報告が先だ。お前等はここで見張っていろ」

リーダーと思しき男が部屋を出ていく。残ったふたりの男は、両側の壁に離れて立ち、腕を組んで黙り込んだ。

燭台の灯がゆらゆらと揺れ、弱々しい黄色の炎が、ふたりの男の輪郭とその濃淡を浮かび上がらせる。

双方背が高く体が大きいが、よくよく見るとその特徴はまるで違っていた。

向かって左の男は、上にも大きいが横幅も広く、ずんぐりむっくりとした巨体。それに比べて右の男は、どことなくシャープな印象を抱かせる引き締まった体つき。
左の巨体がイライラと体を揺らしているのに対し、シャープな右は微動だにせずじっと息を潜めており、辛抱強そうに見えた。

どれくらい経っただろうか。重苦しい沈黙に包まれて、時間がやたらと長く感じる。

いつになったら、あのリーダーの男は戻ってくるのだろう。
そのときは、セシルを殺せという指示を持ってくるのだろうか。

あとどれだけ、自分の命は続く……?

セシルは拘束された手にじんわりと汗をかきながら、ベッドに横たわってなにも出来ぬまま、真綿で首を締められるようにそのときを待った。

焦れてきたのはセシルだけではなかったらしい。セシルを担ぎ上げここまで運んできた左の巨体も、次第にそわそわとし始めた。

「おい。まだなのか」

「俺に聞くな」

右が冷たくあしらう。どうやら、それほど仲のいい間柄でもないらしい。旧知の仕事仲間というよりは、今しがた雇われて集まったといった感じだ。

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