イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「貴様!!」

ルーファスはセシルの首を絞める巨体のもとへ、飛び込み様に腰の長剣を引き抜き振るった。
しかしその線上に、もうひとりの男が庇うように飛び込んでくる。

ぎぃぃん、と刃の交わる甲高い音が部屋に響き、薄暗い闇に閃光を弾けさせた。

力で気圧された男がうしろへ一歩引き、体勢を立て直す。そこへルーファスは休みなく追撃をかけた。
きぃん、きぃん、と間髪入れず金属の当たる音が続いて、ルーファスの反撃にじりじりと男がうしろへ押されていく。

すぐ真後ろにベッドが迫り、男は避けるように高く飛びあがった。勢いのまま、ルーファスの頭上へ剣を振り下ろす。
それをルーファスは剣の腹で受け止めた後、足で男の脇腹を蹴り飛ばした。
男はうしろへ大きく弾かれ、ベッドを通り越した先の床の上に逆さまに転がり落ちる。

強く頭を打ちつけたせいか、脳震盪を起こしたらしい、男は昏倒したまま起き上がらなくなった。
男の戦闘不能を一瞥すると、ルーファスは次いで視線をセシルの首に手をかけた巨体の男に注ぐ。

巨体はすでにセシルから手を放し、剣を引き抜き体勢を整えていた。

大きく真横に振りかぶり、重い一撃をルーファスへと食らわす。
重量は相手が上、真正面から受けたのでは力で負けてしまうだろう、ルーファスはさっと身を屈めてその一撃を交わす。
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