イジワル騎士団長の傲慢な求愛
ルーファスがそっと囁く。
穏やかな眼で見つめられ、その予想外の反応にセシルの頭はいっそう混乱してしまった。

「……ごめんなさい……私、本当にこの場所に立っていていいのか……」

ほろりと、耐え切れなくなった涙がひと雫、瞳からこぼれ落ちて純白のドレスに染みを作った。

「……なにを言っているんだ、お前は」

涙の跡を愛おしそうに眺めながら、ルーファスは柔らかく微笑む。

「お前以外に、誰が俺の隣に立つっていうんだ」

慈愛に満ちた声色が、セシルの心を軽くさせた。

ルーファスの背後にある採光窓からは、眩しい真っ白な光が降り注いでおり、ちょうどふたりのいる祭壇を明るく照らし出している。

ルーファスはセシルの耳もとに唇を当てて、誰にも聞こえないように囁いた。

「愛している、セシル。初めて出会ったあの晩から、俺はお前のことしか瞳に映せなくなった」

セシルの瞳がはっと瞬く。
白光がセシルの涙を光らせて、そっと祭壇の床に奇跡の雨を降らせる。

「どうかこんな俺にも、ひとつだけわがままを言わせてくれ」

神に懇願するように、ルーファスは天を振り仰ぐ。再びセシルに向いた瞳は真っ直ぐで、嘘偽りのないものだった。

「……セシル。俺のそばにいろ。片時も離れるな。ずっと俺の瞳の中で笑っていてくれ」

ルーファスの言葉が、震えるセシルの全身を優しく包み込んでいく。

「俺はお前を、この命のすべてにかえても守ると誓う」
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