イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「あの……ルーファス様」
声をかけると、猛々しい深蒼の瞳がこちらを向いて、思わず気遅れした。
びくびくしながらも、スカートを持ち上げ軽く膝を折り挨拶する。
「わざわざこんな遠方まで会いに来てくださってありがとうございます」
ルーファスは緩慢な仕草で首を捻ったあと、感情のない冷たい声でセシルをあしらった。
「会いにきたのはルシウスだ。俺は護衛に過ぎない」
「護衛……ですか?」
「ルシウスは、剣が得意ではないからな。道中、襲われることでもあれば少々心許ない」
「ルーファス様は、剣がお得意でいらっしゃるのですか?」
宮廷で悪い輩から助けてもらったときに、彼の腕が立つことは証明されている。
けれどあのときは『アデル』で、今は『セシル』だ。ルーファスとは初対面、なにも知らない振りをしなければならない。
「……爵位を継ぐ前は、領内の騎士団を率いていた」
「騎士団長様でいらっしゃったんですね」
なるほど、それでその腰の長剣か、とセシルは納得がいった。素人が振るうには難のある剣だ。
「ああ……だが、俺のことはどうでもいいだろう。お前の婚約者はルシウスなのだから」
突き放すようにルーファスが言った。相手が男だろうが女だろうが馴れ合うつもりはないらしい。
声をかけると、猛々しい深蒼の瞳がこちらを向いて、思わず気遅れした。
びくびくしながらも、スカートを持ち上げ軽く膝を折り挨拶する。
「わざわざこんな遠方まで会いに来てくださってありがとうございます」
ルーファスは緩慢な仕草で首を捻ったあと、感情のない冷たい声でセシルをあしらった。
「会いにきたのはルシウスだ。俺は護衛に過ぎない」
「護衛……ですか?」
「ルシウスは、剣が得意ではないからな。道中、襲われることでもあれば少々心許ない」
「ルーファス様は、剣がお得意でいらっしゃるのですか?」
宮廷で悪い輩から助けてもらったときに、彼の腕が立つことは証明されている。
けれどあのときは『アデル』で、今は『セシル』だ。ルーファスとは初対面、なにも知らない振りをしなければならない。
「……爵位を継ぐ前は、領内の騎士団を率いていた」
「騎士団長様でいらっしゃったんですね」
なるほど、それでその腰の長剣か、とセシルは納得がいった。素人が振るうには難のある剣だ。
「ああ……だが、俺のことはどうでもいいだろう。お前の婚約者はルシウスなのだから」
突き放すようにルーファスが言った。相手が男だろうが女だろうが馴れ合うつもりはないらしい。