イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「ええと……ルシウス様は……どのような方なのでしょうか?」

「剣を振るい戦うよりも、頭を使うことに長けている。俺の政務の補佐をしてもらっている」

「そうでしたか」

どうやら仮面の君は聡明な方らしい。少しづつ解けていく謎に、思わず頬を綻ばせる。

「……嬉しそうだな」なぜだか不機嫌に、ルーファスは言った。「弟との婚約が、そんなに嬉しかったか」

「もちろん! 夢のようです」

「……そうか」

ルーファスはぷいっと顔を背け、再び窓の外に目を向けてしまった。
もしかしてこのルーファスという男は、婚約に反対なのだろうか。

「……ルーファス様は、弟君のお相手が私では、不満なのでしょうか」

不満だ、と言われても困ってしまうが、これから兄妹の関係になるというのに隠し事もよくないと思った。
ルーファスの背中をじいっと見つめていると、ふと振り返った彼は、お得意の意地悪そうな顔で笑っていた。

「不満など。真面目過ぎるルシウスには、お前のようなお転婆娘がちょうどいいと思っていたところだ」

「お、お転婆……!?」

今日、セシルは一度もお転婆などしていない。それどころか、借りてきた猫のように大人しくしていたはずなのだが。

「今日のドレスは似合っているじゃないか。あんな男物の服と剣よりも、ずっと」

びくりとセシルの肩が震え、全身から血の気が引いた。
まさか。弟の振りをして男装していたことが、バレている……!?
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