イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「……私がお会いしていたのは、やはりルシウス様だったのですね」
「書状にも記したでしょう。貴方と初めてここで出会って、恋に落ちたと」
曲が止み、ふたりは一歩引いて一礼する。
セシルの手を取ったルシウスが向かった先は、この会場の出口だった。
「外へ出ませんか」
セシルはてっきり、あの日のように庭園へ行くものだと思っていた。
しかし、ルシウスに肩を抱かれ、歩んだ先は庭園に面した回廊のさらに奥。
「……どこへ行くんですか?」
「ふたりきりになれるところですよ」
天井の高い広間の脇には、客間の扉がいくつも並んでいて、舞踏会の夜は自由に休みを取れるように解放されていた。
――本当は休みなどとは口実で、意気投合した男女が、一夜の過ちを犯すために用意された個室なのだけれど。
鍵のかかっていない一室へ、ルシウスはセシルを招き入れる。
その意味を知っていたセシルは、足が固まり動けなくなってしまった。
入ろうとしないセシルに向かって、ルシウスがにっこりと微笑む。
「――お話をしましょう。私のこと、あなたのこと。いずれ夫婦となるのですから」
仮面の奥の悪意の感じられない笑顔に、セシルは自分に大丈夫だと言い聞かせて頷く。
「書状にも記したでしょう。貴方と初めてここで出会って、恋に落ちたと」
曲が止み、ふたりは一歩引いて一礼する。
セシルの手を取ったルシウスが向かった先は、この会場の出口だった。
「外へ出ませんか」
セシルはてっきり、あの日のように庭園へ行くものだと思っていた。
しかし、ルシウスに肩を抱かれ、歩んだ先は庭園に面した回廊のさらに奥。
「……どこへ行くんですか?」
「ふたりきりになれるところですよ」
天井の高い広間の脇には、客間の扉がいくつも並んでいて、舞踏会の夜は自由に休みを取れるように解放されていた。
――本当は休みなどとは口実で、意気投合した男女が、一夜の過ちを犯すために用意された個室なのだけれど。
鍵のかかっていない一室へ、ルシウスはセシルを招き入れる。
その意味を知っていたセシルは、足が固まり動けなくなってしまった。
入ろうとしないセシルに向かって、ルシウスがにっこりと微笑む。
「――お話をしましょう。私のこと、あなたのこと。いずれ夫婦となるのですから」
仮面の奥の悪意の感じられない笑顔に、セシルは自分に大丈夫だと言い聞かせて頷く。