ブザービーターは君のため
5.大悟side:余計なこと
「真央ちゃん。
 のんちゃんのこと知ってるみたいだけど余計なこと言わないでね。」

 今まで見たことないような冷たい顔。
 大悟先生のこんな顔、知らない。

「で、でも。大悟先生。」

「俺、君とは先生って間柄じゃないけど?」

 いつもの飄々とした態度に戻った大悟先生にホッと息をつく。

「そんな屁理屈はいいんです。
 どうしてつらい記憶を思い出させるような場所に澤村さんを……。」

「澤村なんて昔みたいに呼ぶ奴、真央ちゃんだけだよ?」

「………。」

「たぶんこれから会う人みんな、監督か、のんちゃん。」

「でも。バスケに触れることの方がずっとつらいんじゃ。」

「何?
 あいつからバスケを取り上げたいの?」

 また冷たい目つきで言われてゾクリと背筋が凍る。

「そ、そんなつもりは……。」

「あいつからバスケを取り上げて何が残ると思ってんの?」

 冷たい態度に耐えきれなくなって逃げるように立ち去った。

 大悟先生のつぶやきは聞こえないまま。

「ちぇ〜。のんちゃんと関わると女の子にモテなくなっちゃうな〜。」

 それはいつものチャラくていい加減な大悟先生だった。



< 8 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop