守りたいもの
高校2年の弟の柊矢(とうや)は、サッカー少年。
静流とも仲良く、兄のように慕っていた。
「静流くん、行ったんだ…」
「うん…」
この二ヶ月、私が家にいる時はいつも泣いていたことを知ってる柊矢。
「待ってるんだろ?
だったら、泣いてばかりいたらダメだろ?」
「……待たないよ。
静流には、婚約者がいる。」
「はぁ?」
「だからね、これは本当のお別れ。」
柊矢は、持っていたアイスをボトリと落とした。
「柊矢……姉ちゃん、お母さんのとこに行く。」
お父さんと離婚したお母さんは、実家である隣県の温泉街に戻っていた。
年老いた祖父母と3人で、温泉街で小さな喫茶店を切り盛りしてる。
私は、その小さな喫茶店が大好きだった。
だから、そこに行くことを決めたんだ。
だってそこは、静流が知らない場所だから。