守りたいもの


高校2年の弟の柊矢(とうや)は、サッカー少年。

静流とも仲良く、兄のように慕っていた。


「静流くん、行ったんだ…」


「うん…」


この二ヶ月、私が家にいる時はいつも泣いていたことを知ってる柊矢。


「待ってるんだろ?
だったら、泣いてばかりいたらダメだろ?」


「……待たないよ。
静流には、婚約者がいる。」


「はぁ?」


「だからね、これは本当のお別れ。」


柊矢は、持っていたアイスをボトリと落とした。


「柊矢……姉ちゃん、お母さんのとこに行く。」


お父さんと離婚したお母さんは、実家である隣県の温泉街に戻っていた。

年老いた祖父母と3人で、温泉街で小さな喫茶店を切り盛りしてる。

私は、その小さな喫茶店が大好きだった。

だから、そこに行くことを決めたんだ。


だってそこは、静流が知らない場所だから。


< 10 / 29 >

この作品をシェア

pagetop