守りたいもの


私が出した大きな声に、柊矢は黙り込んだ。


「父さんには、なんて言うんだよ…」


「お父さんには、言えないよ…」


お父さんは、滅多に家に帰って来ない。

お父さんの実家は大きな建設会社。

お父さんはその会社の社長の弟で、日本各地を営業して飛び回っている。

だから普段は、私と柊矢は二人暮らしみたいなもんだ。


「妊娠のことはともかく、母さんのとこに行くことは言えよ。」


「うん…ごめんね、柊矢。
柊矢、一人ぼっちは寂しい?」


「うっせ…。
けど、静流くんに黙って産むんだから、覚悟はできてるんだよな?
母さんだって、許すかはわかんねえからな。」


「うん…わかってる。」


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