再会の街
「ほら、そんなに見つめられたら、顔に穴が空いちゃうよ」


 苦笑しながら、そう言われる。


「だって、信じられなくて」

「そうだよね」


 テーブルの上で組まれた指に視線が吸い寄せられた。

 左手の薬指に光るリング。


「あ、これ?」


 こちらの視線に気付いて、指に目を向けている。


「こっちに転勤してくる前に、結婚したんだ」

「そうなんですか。それはおめでとうございます」

「ありがとう。でも、君にこんな風におめでとうなんて言われるのも、なんだか変なものだね」


 照れたような顔をして、こちらを見ている。

 振った人と振られた人。

 あの頃のことを、この人も思い出しているのだろうか。


「そうですね。でも、あの頃とは違いますから」


 そう、あの時とは違う。

 この人には、いつもそばにいてくれる人がいる。

 そして自分にも。

 何気なくテーブルに乗せたこちらの手に、視線が注がれる。

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