再会の街
 そう言われて、ふと思い出す。

 去り際に話しかけられていたような。


「そういえば、この場所をはなれる時に、話しかけられていたような気がするんだよね。もしかしたら、手帳のことを教えてくれようとしていたのかもしれない」

「自分の名前とか、書いてあったか?」

「うん。住所と電話番号も書いてあるけれど」

「それなら、連絡があるかもしれないな。その拾ってくれた本人からさ」

「そうだといいけどね」


 見られて困るようなことは、何も書いていないけれど。


「それより、どうしようか?」

「え?」

「だって、映画のチケット、俺の分までお前が持っていて、それも一緒に落としたんだろう?映画は次までおあずけだな。まぁそれまでに、手帳がちゃんと見つかったらの話だけどな」

「・・・」


 またまた、追い討ちを掛けないで欲しい。


「まぁ、大丈夫だろうよ。きっとその人が拾ってくれているって」

「あのね、ぜんぜんフォローになっていないんだけれど」

「はははは・・・」


 笑って誤魔化されたか。


「まぁ、いつまでも考えていてもしょうがないさ。ボウリングでもしに行くか?」

「そうだね」
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