再会の街
 夕刻。

 彼と駅で別れて、家へと向かって歩いていた。

 彼といる最中は何とか手帳のことは忘れていたのだが、一人になるとまた思い出してしまった。

 薄闇の中、また同じ道を通って探してみるのだが、やっぱりない。


(あの人が拾ってくれているといいんだけれど)


 落ち込んだ気持ちのまま、家へとたどり着いた。

 部屋の電気をつける前に、留守番電話の灯りが点滅していることに気づく。


(もしかしたら・・・)


 慌てて部屋の電気をつけて、バックをベッドの上へと放り出して、再生ボタンを押した。


『一件です』


 機械の声のあとに、男の人の声が聞こえる。


『もしもし、あのー、昼間にあなたの手帳を拾ったものです。そこにあなたの名前と自宅の電話番号が書いてあったので、かけました。不在のようなので、また夜にでもかけます』


 プツリと切れる。

 拾われたんだという安心感と、拾われてしまったんだという恥ずかしさがある。



 そして、夜9時。

 電話は鳴った。
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