再会の街
「もしもし」


 電話の主は留守番電話に入っていた声の人だった。


『よかった。今度はいられたんですね。あの時は、すいませんでしたね。ケガはありませんでしたか?』

「はい、大丈夫です。それより手帳を拾っていただいたそうで、どうもありがとうございました」

『すぐに気がついて、声を掛けたのですが、急いで行ってしまわれて・・・』

「すいません。待ち合わせに遅れてしまうので、声を掛けられたような気がしたのですが、無視してしまいました。本当にすみませんでした」

『いいんですよ。何かあなたの手がかりがないかと、失礼して中を見させていただきました。幸いにもあなたのお名前と自宅の電話番号が書かれていたので、直接連絡してしまいました』

「そうですか。本当にありがとうございました」

『それで、お渡ししたいんですが、どうするほうがよろしいですかね』

「そうですね」

『差つかえがなければ、直接お渡ししたほうがいいと思うんですが。ご都合の方は?』

「そちらのご都合は?」

『早い方がいいと思いますので、明日とかはどうでしょう?』

「明日の夜でしたら、定時の5時半には会社を出るのでそれ以後は大丈夫です」

『勤め先の場所は何処ですか?』


 そう聞かれて、会社の場所の地名を答えた。


『それでしたら、駅前に「Afterglow」という喫茶店があるのをご存知ですか?』

「はい」

『では、それで夜の7時にお待ちしています。目印にオレンジ色の表紙の本を持っていますので』

「はい、わかりました」

『それでは、明日』
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