再会の街
 結局、また走らなければならなかった。

 定時で帰れるつもりが、帰りがけの電話で遅くなってしまった。

 昼休みに彼の携帯電話に掛けて、手帳が見つかったことを告げた。


『よかったじゃないか。これで今度の日曜にはちゃんと映画が見られるな』


 そう言った彼に、拾ってくれたのが男の人だとは言えなかった。

 彼が聞かなかったということもあるけれども。



 息の切れたまま、喫茶店「afterglow」へと駆け込んだ。

 息を整えて、オレンジ色の表紙の本を手ががりに店内を見渡す。

 すぐに見つかった。

 その人も気がついて、一番奥の席で、軽くこちらに手を振っている。

 その席へと向かった。


「遅くなって、すみません」

「いいえ。それより走ってこられたんですね」


 まだ切れている息。

 ボサボサになった髪。


「帰りがけに電話が入ってしまって」

「そうですか。何か飲みますか?」

「それじゃ、レモンティーを」
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