初恋マニュアル
シャーペン
クルクルとよく回るシャーペンは、私の席からよく見える。
器用なんだなって、思ったのが最初だった。
長くて繊細そうな指は、それをリズムよく回して、たまに止まるときは、ノートをとってる時。
いつの間にか、私の目は彼の指先に釘付けになり、そのせいでいつも、自分のノートをとり忘れてしまう。
チャイムが鳴り、授業の終わりを告げると、シャーペンは無造作にしまわれた。
そこでようやく私は彼の指から視線を外す。
そしていつものように、隣の席の愛里に声をかけた。
「愛里、ごめん!今のノート写させて?」
両手を拝むように顔の前で合わせてお願いすると
「えぇ!またぁ?」
若干、呆れた顔をしながらも、愛里はちゃんとノートを手渡してくれた。
「ありがと!だから愛里好きぃ」
大袈裟に声を1オクターブ高くして、甘えるように愛里に抱きつく。
「もぉ、しょうがないなぁ」
いつもそう言って私を甘やかしてくれる愛里は、小学校からの腐れ縁でもある。
人見知りな私の、唯一の友達。
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