初恋マニュアル
「えぇ!いいの?うれしい!去年まで着てたやつ、もう小さくて着れなかったんだ」
「いいの、いいの。いろんな色とか柄があるから、好きなの選んでいいからね?あと、うちのお母さんが着せてくれるから、うちから浴衣着てそのまま夏祭り行こう?」
浴衣ももらえて、着付けまでしてくれて、なんだかぜいたくな夏祭りになりそうだ。
「ほんと?うわぁ、楽しみぃ!じゃあ明日は何時くらいに行けばいい?三時くらいかな?」
「そうだね、じゃあそのくらいに待ってるから」
そう言って電話は切れた。
明日のことをおもうとなんだかワクワクする。
――やったぁ!久しぶりの愛里の家。久しぶりの愛里とのデート。愛里ママにも久々に会える!
図書館で感じたモヤモヤ感は、もうすっかり影をひそめていた。
あれから、LINEもよくくれるようになったし、今日だって夏祭りに誘ってくれた。
あのときの違和感は、自分のかんちがいだったんだってだんだん思うようになっていた。
スマホをながめながら、自然とニヤニヤしてしまう。
それくらい、久しぶりの愛里からの誘いはうれしかったのだ。
――浴衣かぁ……楽しみぃ!