初恋マニュアル



夏祭り当日――



私は朝からソワソワしっぱなしで、落ち着かなかった。


夏休みの間、家でダラダラと過ごすばかりだった私にとって、今日の夏祭りはかなりの大イベントだ。


お母さんにどうしたの?なんて、けげんな顔をされるくらい私のテンションは高かった。


うちから愛里の家までは、自転車で五分くらいの場所にある。


ちょっと早めに三時になる十五分前には家を出た。


外はまだむし暑くて、家から出たとたんジワリと汗がにじむ。


家の中ばかりだった私の肌が、赤くなりそうなくらいの強い日差しだ。



――良かった、これつけてきて。



腕には紫外線をカットする手袋をはめて、ツバの大きい帽子もかぶってきた。


もちろん、日焼け止めもバッチリだ。


はたから見たら変かもしれないけど、色の白い私はすぐに真っ赤になってしまうから、日焼けして痛い思いをするよりはましだと自分を納得させる。


自転車に乗ると、愛里の家へと向かってペダルをこいだ。


たった五分とはいえ、汗はあとからあとからふきだしてきて、背中をツーっと汗が流れ落ちるのがわかる。


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