初恋マニュアル
すると、愛里がそれに気づいてうれしそうにいくつか浴衣を私の方に引き寄せてくれる。



「ねぇ、美羽はどれがいい?」



さっき私がみんなもう選び終わってると思ったのはかんちがいだったみたいで、愛里は一番に私に選ばせてくれた。



「え……いいの?」



うれしい反面、ほかの子たちはいいんだろうか?と、遠慮がちにそう聞いてみる。



「なに言ってんの?そのために来たんでしょ?」



「そうだけど……」



ほかの二人を気づかうように視線を向けると、彼女たちはあわてて手をふった。



「あ、あたしたちはいいの。たまたま愛里に電話したら、浴衣あるから来ないかって誘ってくれただけで。丸山さんが選んだあとに選ばせてもらえることになってるから」



その言葉を聞いて、とたんにさっきの不安が消え去った。


愛里がわざわざ呼んだわけじゃなかったことにホッとする。


しかも浴衣もちゃんと私から選ばせてくれるつもりだったことがうれしくて、涙が出そうになった。



愛里に今すぐ抱きつきたいくらいだったけど、ほかの二人の目を考えてそれはあえてやめておく。
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