初恋マニュアル
神社の明かりが見えてきた。
三浦くんたちは私たちに気づくことなく、ずいぶん先の方を歩いてる。
地元じゃないのに、学校のみんなが自分の町の夏祭りに集まってることがすごく不思議な気がした。
私たちはなれない下駄のせいで、どうしても歩幅も狭いし歩くのが遅くなってしまう。
特にどんくさい私はみんなよりさらに遅れそうになって、あわてて追い付くようにかけだした。
みんなに追いついて一息つくと、愛里が私の手をギュッとにぎってくる。
迷子になんないでよ?なんて、お母さん口調で言いながら。
いつも愛里にはこうして助けられていて、私はずっとそれに甘えてきた。
でもそれを最初に突き放したのは愛里だ。
もっとしっかりしなさいって、愛里に頼ってばっかりじゃだめだって……
なのにたまにこうして愛里は私を甘やかす。
だからとまどうのだ。
このまま甘えちゃっていいのかどうかを……
「あ……愛里。ありがと。もう大丈夫」
おずおずと遠慮がちにそう言うと、一瞬、愛里の表情がくもったように見えた。