初恋マニュアル
きっと愛里は私が甘えるのはゆるさないけど、自分が甘やかすのは気にならないのかもしれない。


それどころか、私がやんわり拒否すれば、それはそれで面白くないのだ。



「そ?ならおくれないでついてきてね?」



だけどそれさえも気づかせないほどの完璧な笑顔で、愛里は私をそううながす。


そして少し前を歩く夏帆ちゃんたちの方へと近づいていった。


その背中を見ながら、私はぼんやりと親離れと子離れって言葉を連想していた。


頭の中に浮かんだその言葉は、私と愛里の関係によく似てるような気がする。


大丈夫といってしまった手前、みんなにおくれないように歩きながら、ずいぶん先を歩く三浦くんたちをそっとながめた。


さっきは気づかなかったけど、よく見ると男子たちも浴衣や甚平を身に着けている。


いつもとはちがう雰囲気に少しだけドキリと胸が高鳴った。


暗いのと遠いのではっきりとはわからないけれど、三浦くんは藍色の浴衣を着ているように見える。


ほかにも一人、黒の浴衣を着ている男子がいるだけで、あとはみんな甚平姿だ。


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