初恋マニュアル
そんな私の気持なんかおかまいなしに、愛里はニヤニヤしながら彼の名前を口にした。



「三浦くんだよ、消しゴムひろってくれた人。なになに?気になるの?」



「ちがっ……!」



「なかなかイケメンだよ?たしか、陸上部だったかな?」



うれしそうに私をからかう愛里に、私は必死に説明した。



「そうじゃ……なくて!さっきの……お礼とか言っといた方がいいかな……って、思っただけで……」



――三浦くんて言うんだ……陸上部なんだ……



言葉とは逆に、愛里の言った彼の情報を頭の中で確認している自分がいる。



「あーそうだね?テストの最中だったし、お礼は言った方がいいかも……。それに」



「それに?」



「美羽が自分から男子に声かけようとするなんて、大進歩だしねぇ」



にやりと笑いながら、ひやかしモード全開な愛里に下心がないとはいえない私は、しどろもどろになってしまう。



「だっ……から……それは……消しゴムのお礼だってば」



そんな私の言葉なんか耳に入ってないのか、愛里は照れない照れないと言ったあと、さらっとありえないことを言い放った。
< 14 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop